消化器専門外来
消化器外科専門医が、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、胆のう、膵臓などの消化器全般を診療しています。近隣の基幹病院とも密に連携し、消化器の幅広い症状や疾患を専門的にみています。一般的な内科診療では見逃されやすい疾患を的確に判断し、最適な治療をご提案しております。また、苦痛がなく楽に受けられる内視鏡検査なども可能ですので、消化器にご不安がありましたらお気軽にご相談ください。
下記のような症状がありましたら、消化器専門外来を受診してください
- 胃が痛い
- 胸焼けがする
- 胃もたれがする
- 飲み込む時につかえる
- 風邪でもないのに咳が出る
- 吐き気がする
- お腹の調子が悪い
- 便秘や下痢になりやすい
- 便秘と下痢を繰り返す
- 血便が出た・便が黒い
- 食欲がない
- 急に痩せてきた
- 顔色が悪くなった
など
注意が必要な消化器疾患
食道
食道がん
早期の食道がんには自覚症状がほとんどありませんが、血管やリンパ節を通して転移が起こりやすく、注意が必要ながんです。ある程度進行すると飲み込む際につかえる感じがする、しみる、チクチクするなどが現れます。さらに進行すると咳、血痰、声がれや声のかすれ、体重減少、胸や背中の痛みが現れます。
発症リスクが高くなるのは40歳代からで、60代の男性の発症が多いという傾向があり、飲酒や喫煙がかかわっているとされています。
自覚症状のない早期の食道がんは、胃内視鏡検査で発見することができます。転移していない早期の食道がんで、粘膜にがんがとどまっているケースでは内視鏡による切除が可能です。内視鏡切除が不可能な場合には、食道の一部を切除するなどの外科手術が必要になります。この場合には、転移を予防するため、周辺のリンパ節切除も必要になります。既往症があるなどで外科手術ができない場合には、放射線療法や抗がん剤による化学療法が行われます。
逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流し、炎症を起こしている状態です。胃粘膜と違い、食道には強酸の胃酸から粘膜を防御する粘膜がないため、胃酸が逆流すると炎症を起こし、それを繰り返しているとびらんや潰瘍ができて食道の粘膜が欠損する場合もあります。
症状には、胸やけ、吐き気、酸っぱいげっぷ(呑酸)、胸部の痛み、のどの違和感、長引く咳、耳鳴り、めまいなどがあり、消化器系の病気だと気付かない場合もあります。食道裂孔ヘルニアによって起こるケースが多く、肥満や姿勢による胃の圧迫、逆流防止機能の低下、胃酸の分泌過多を促す食事内容などが主な原因です。
上部内視鏡検査で食道と胃の状態を確認し、それに合わせて最適な治療法をご提案しています。有効な薬物療法がありますが、逆流を起こしにくくする生活習慣の改善も再発を防ぐために重要です。なお、当院では楽に受けられる内視鏡検査を行っていますので、安心してご相談ください。
胃
胃がん
日本人に発症するがんの中でも3番目に多いがん(2016年時点)であり、50~60歳代を中心に発症します。早期には自覚症状がほとんどありませんが、この時期に発見できれば内視鏡を用いた切除による完治も可能です。そのため、リスクの高まる40歳になったら、早期胃がんを唯一発見できる内視鏡検査を受けるようおすすめしています。
がんが粘膜上皮から下層に進んだ胃がんは、やがて筋肉層に達して転移の可能性が高まり、進行胃がんになって腹膜に転移すると腹部全体にがんが拡散する腹膜播種が起こることもあります。進行胃がんになると嘔吐、食欲不振、吐血、黒いタール状の便、急な体重減少、全身の倦怠感などの症状が現れます。
早期胃がんでも外科手術を行って周辺のリンパ節を含めた切除が検討される場合もあります。進行胃がんの場合には、転移や腹膜播種などの状態によって適した外科手術や化学療法などを行います。
胃ポリープ
粘膜の一部が隆起したポリープが胃にできた状態です。胃腺腫、胃底腺ポリープ、過形成ポリープなどがありますが、良性のものがほとんどを占めます。ただし、胃腺腫と過形成ポリープには、出血リスクがあるもの、がんと鑑別の困難なもの、がん化リスクがあるものもまれにあるため、組織を採取して生検を行う必要があります。
症状が現れることが珍しいため、ほとんどの胃ポリープは検診や内視鏡検査で発見されています。
胃底腺ポリープの場合には治療や経過観察は必要ありませんが、胃腺腫と過形成ポリープでリスクがあるものについては定期的に経過観察し、生検の上、切除が必要になる場合もあります。
慢性胃炎
暴飲暴食などによる急性胃炎と違い、慢性的に胃の炎症が起こっている状態です。原因はピロリ菌感染がほとんどを占めており、放置していると胃がんリスクが上昇します。炎症が起こっている場所や症状の強さなどによって萎縮性胃炎などいくつかの種類にわけられます。
萎縮性胃炎は、長期にわたる炎症により、胃粘膜が萎縮している状態の慢性胃炎です。症状がないまま進行していくことが多く、症状が現れる場合にも胃もたれや膨満感など軽いケースがほとんどです。萎縮がさらに進むと腸上皮化生という状態になります。これは、胃の粘膜が腸のような粘膜に変質するもので、胃がんに進展する可能性があります。
慢性胃炎の治療では、ピロリ菌感染の有無を調べ、感染が確認されたら除菌治療を受けることが重要です。また、胃の粘膜の状態に合わせて、胃酸分泌を抑える薬、胃粘膜を保護する薬、胃の働きを促す薬などを用いて治療していきます。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
通常は粘液に守られている胃や十二指腸の粘膜が胃酸によって侵され、欠損する潰瘍を起こしています。ピロリ菌の感染が主な原因ですが、ストレスや解熱鎮痛薬(NSAIDs)の服用などによって起こる場合もあります。
胸やけ、膨満感、食欲不振、上腹部やみぞおちの痛みなどの他、潰瘍からの出血による吐血や下血、タール便(黒っぽい便)、貧血などが現れるケースもあります。
ピロリ菌感染が確認されたら、除菌治療を行います。また、解熱鎮痛薬(NSAIDs)を服用している場合には、服用を中止し、別のお薬を処方します。潰瘍の治療としては、粘膜の状態に合わせた治療薬を用いますが、出血や穿孔が起こっている場合には、内視鏡や外科手術による緊急処置が必要になります。
アニサキス
生の魚介類に含まれたアニサキスという寄生虫によって発症する食中毒です。アニサキスはカツオやサケ、イカなど、身近な魚介類に寄生しています。生でこうした魚介類を摂取すると、アニサキスが寄生していた場合には、知らずに体内に取り込んでしまい、アニサキス症を発症します。胃粘膜をアニサキスが傷付けることで急激に激しい痛みがみぞおち周辺に起こり、嘔吐する場合もあります。人間の体内で生き続けることができない寄生虫ですが、強い痛みが何日も続くケースがあります。内視鏡で除去でき、その後は症状がすみやかにおさまっていきますので、早めに消化器外来を受診してください。
大腸
大腸がん
大腸がんは罹患率は増加傾向にあり、がんによる死亡原因として2020年には男女ともに大腸がんが第1位になるとみられています。早期の自覚症状はほとんどなく、進行すると下痢や便秘などの便通異常が現れる、血便や下血が起こるなどの症状が現れ、お腹の張りや痛み、残便感、急な体重減少などが起こります。
大腸がんのほとんどは、粘膜の一部が隆起した大腸ポリープが大きくなってがん化したものです。早期の大腸がんや前がん病変である大腸ポリープは自覚症状がなく、便潜血検査でみつかることはほとんどありませんが、内視鏡検査であれば発見可能であり、検査時の切除もできます。発症が多いのは50歳代ですが、リスクが高まる40歳代になったら定期的に内視鏡検査を受けることで日常生活に支障なく完治も可能です。
進行がんになっている場合には、外科手術で大腸の一部と周辺のリンパ節を切除する必要があります。手術ではがんを取り切れないなど、転移が進んでいる場合には、放射線療法や化学療法を用います。
大腸ポリープ
大腸粘膜の一部が隆起したもので、腫瘍性と非腫瘍性のポリープにわけられます。非腫瘍性ポリープの場合にはがん化する可能性はありませんが、腫瘍性の中でも大腸腺腫は放置していると大腸がんになる可能性もあります。大腸腺腫は大腸ポリープの約8割を占めており、発生当初は良性でもある程度以上大きくなると悪性のがん化を起こす可能性があり、大腸がんのほとんどはこの大腸腺腫が原因になっているとされています。大腸ポリープの段階で切除することは、将来の大腸がん予防になります。内視鏡検査であれば大腸ポリープが発見できますし、その場で切除が可能です。
潰瘍性大腸炎
大腸粘膜がびらんや潰瘍を起こす炎症系の大腸疾患で、生涯にわたって症状が好転する寛解と悪化する再燃を繰り返す難治性の疾患です。はっきりした原因もわかっていないことから、厚生労働省の指定難病として医療費助成制度の対象にもなっています。
治療により症状がおさまっても、再発を繰り返しながら進行していくため、症状のない寛解期にも治療を続けて状態をコントロールする必要があります。20~30歳代の若い世代の発症が多い傾向があり、血や粘液の混ざった下痢、腹痛などの症状が現れます。進行すると貧血や発熱、体重減少などの症状も現れます。
自己免疫疾患との指摘もあり、免疫に作用する治療法が有効な場合もあります。
大腸の炎症を抑える薬剤には優秀なものがあるため、症状をまずはそれで抑えていきます。症状がおさまってきたら、寛解状態を長く続かせるために治療を続けていき、進行をできるだけ抑えます。免疫機能に直接働きかけて作用する生物学的製剤を用いた治療が選択されることもあります。
過敏性腸症候群(IBS)
緊張などの強いストレスをきっかけに、突然の腹痛と、下痢や便秘、腹部膨満感、ガスが出るなどの症状が慢性的に現れますが、検査をしても大腸に異常がみつからない病気が過敏性腸症候群です。過敏性腸症候群は、腹痛や排便の期間、頻度、内容など、診断に世界的な基準が定められていて、治療可能な病気です。
症状を緩和させる薬の他、予兆を感じた時に服用してそれから現れる症状を和らげる薬などで治療を行っていきます。また、食事を中心とした生活習慣の改善も重要です。ストレスや不安が強い場合には、抗不安薬などの処方も行います。市販薬の服用が逆効果になっている場合もありますので、お悩みがあるようでしたら1度ご相談ください。