下痢とは
水分を多く含んだ形のない便が出て、排便回数が増えます。腸からの分泌物増加や腸の水分吸収が不十分な場合、また蠕動運動が過剰に働いた時にも下痢が起こります。急性の下痢は食中毒や感染症が原因である場合が多く、3週間以上続く慢性の下痢にはそれ以外の腸疾患が原因になっている可能性があります。
下痢が起こる主な原因
暴飲暴食
発熱がないことが特徴で、食べ過ぎや飲み過ぎで下痢になります。疲れがたまっていると消化機能も弱くなり、ちょっと食べ過ぎただけで下痢になる場合があります。
香辛料やアルコール
唐辛子などの刺激物やお酒を摂取しすぎると、胃酸の分泌が促進され、蠕動運動が過剰になって下痢を起こしやすくなります。
冷え
身体が冷えると消化機能が低下します。冷たいものをたくさんとると胃腸が冷えて血行が悪化し、消化機能が低下して下痢を起こします。冷え性の場合、下痢が起こりやすくなるケースと、便秘になりやすいタイプがあります。
細菌やウイルス感染
急性の下痢を起こす感染症には、赤痢、コレラ、風邪やインフルエンザ、ノロ・サルモネラ菌・O-157などの食中毒があり、細菌やウイルスの感染が原因で起こります。多くの場合、下痢だけでなく発熱や吐き気、嘔吐、腹痛なども現れます。
ストレスによる腸の痙攣
腸の働きをコントロールしている自律神経がストレスの影響を受けてその働きを乱されると、腸が痙攣して下痢や便秘が起こります。
下痢の症状がある主な疾患
過敏性腸症候群
緊張や不安などのストレスをきっかけに腸の蠕動運動が異常になり、腹痛から下痢を起こし、排便すると症状が一時的におさまります。下痢だけでなく便秘、便秘と下痢を繰り返す、腹部膨満感、不意にガスが出るなどの症状が現れることもあります。
潰瘍性大腸炎
慢性的な腸の炎症が起こり、ただれや潰瘍が多発する病気です。治療によって症状がおさまる寛解期にも進行して再燃しながら悪化していくため、生涯治療を続けて良好な状態をできるだけ長く保つコントロールが重要です。下痢の他、粘液や血液の混じった便が出る、発熱などの症状があり、ストレスをきっかけに症状が悪化する傾向があります。
大腸ポリープ
ポリープはイボのような隆起のことで、大腸粘膜にできたものが大腸ポリープです。ほとんどは良性ですが、放置していると大腸がんに進行する可能性があり、内視鏡で切除することで大腸がん予防につながります。自覚症状に乏しいのですが、下痢や便秘、血便などの症状が現れる場合もあります。
食中毒や風邪
直中毒(サルモネラ菌やO-157、ノロウイルスなど)ウイルス感染による風邪やインフルエンザ、コレラや赤痢などで急性の下痢が現れます。腹痛、発熱、嘔吐をともなっている場合には感染症が疑われます。
乳糖不耐症、アレルギー性胃腸炎
牛乳などに含まれる乳糖を分解する酵素がない体質の場合、牛乳を飲んで下痢を起こすことがあり、それを乳糖不耐性と呼びます。アレルギー性胃腸炎では、アレルゲンとなる食品の摂取によって下痢や嘔吐、腹痛などが起こります。消化器外来を受診してアレルゲンを特定し、その食品を避けるようにしてください。
下痢を予防するために
腹八分目
食べ過ぎや飲みすぎをセーブしましょう。辛いもの、アルコール、冷たい飲み物などをとり過ぎないようにしてください。
腸内環境を整える
乳酸菌や発酵食品、そして食物繊維を積極的にとって、腸内環境を整えましょう。
冷えの防止
入浴ではバスタブにゆっくり浸かって身体を芯まで温め、お風呂から上がったら身体を冷やさないようにしてください。お腹や手足が冷えないように気をつけてください、夏場もエアコンなどで冷えが起こっている場合がありますので、注意してください。
ストレスの解消
腸の働きをコントロールしている自律神経はストレスの影響を受けやすいため、無理をしないようにしましょう。
睡眠をたっぷりとって、リラックスできる時間を作り、上手にストレスを解消してください。
タバコを控えましょう
ニコチンは腸の蠕動運動を急激に促し、下痢になりやすくします。本数を減らし、できれば禁煙しましょう。
急性下痢の対処法
胃腸を休める
食事を1回抜いて、胃腸を休ませてください。1食抜いた後は、すりおろしたリンゴ、おかゆ、野菜スープなど消化がよく脂肪分の少ないものを少量食べて様子をみます。一過性の下痢であれば、これでかなり症状が緩和します。緩和しない場合には早めに消化器外来を受診してください。
たっぷりした水分摂取
下痢になると身体から大量の水分が失われてしまいます。脱水症状を起こさないために、胃腸を刺激しない温かいお湯をたっぷり飲んでください。一気に無理して飲むのではなく、何度にもわけて飲むことが重要です。
下痢止めに注意
感染症が原因の下痢では、市販薬を安易に服用するとウイルスや細菌が出す毒素が大量に腸にたまって一気に重篤な症状を起こし、命にかかわる危険性もあります。下痢は有害なものを体外に排出するための防御反応でもありますので、無理に症状を抑えることでこうしたことが起こりやすいのです。胃腸を休めても症状緩和しない時や、嘔吐や発熱などがともなう場合には、できるだけ早く消化器外来を受診してください。